先端教育研究所  >  ことばラボ  >  新しい入試傾向と国語の重要性について

新しい入試傾向と国語の重要性について

まとめ

志望校合格は国語がカギ

意外に知られていないのですが、志望校に受かる、落ちこぼれからの逆転を目指すには、国語を得意にすることが最短距離です。理由は簡単、どんな教科であっても、その教科書や参考書に書いてあることを理解するためには「読解力」が必要だからです。

しかし、読書する子どもが激減した現代では、算数の文章題を読む力すら、なかなか学校教育だけで身につけることは難しい状況です。

どうして国語は学びにくいのか

よく親御さんからこのようなことを耳にします。 「英語や数学と違って、どうやって国語を教えれば良いかわからない」。

その秘密は、国語という科目の特殊性にあります。英語や数学は授業で一から教わったことを積み上げて行く科目ですが、国語の「話す」「聞く」「書く」「読む」という行為は、学問で身につけたのではなく、普段の暮らしの中で自然に身についてきたものですよね。

かつて国語が得意だった親御さんでさえ「読書しなさい」と言う以外に指導法が思いつかないのは、ここに理由があったのです。

センスの科目と言われる理由

公式とか定義・文法によって手順を踏んで身につけたものではなく、生活の中で知らないうちに、その多くを身につけてしまった科目。それが国語です。

手がかりとなる公式もなく、手探りで「正解」を見つけようとするわけですから、物語の心情読解で、百人百様の答えになるのではというイメージを持つのも当然なことです。だから、生まれ持ったセンスがないと永遠に対応できないような感覚にとらわれてしまうのです。

外国語のように学びなおす

一方、同じ言語である英語は、皆さんどう勉強されましたか。

文法や構文、長文読解におけるパラグラフリーディングなど、主題や強調したい場所がどこに現れやすいかについて、意識的に学習したはずです。

実は日本語にもそのようなポイントがあります。それなのに、母国語として習慣として身につけてしまうがゆえに、「たくさん読書すればわかるようになる」という感覚が今まで幅をきかせてきたのです。

国語で成績を向上させるには、このような日本語のルールについて、「外国語のように意識的に勉強するプロセス」が最も有効です。そして英語と同様、いったん規則を覚えてしまえば、あとは慣れるだけになります。

読書の本当の効果とは

たくさん本を読ませれば成績が上がる、という指導でも人によっては効果が上がります。その理由は、「筆者のイイタイコト」がどの場所に、どのような規則で現れるか、その法則性についてまるで柔道の乱取り稽古や自転車の乗り方を覚える時のように、身体で無意識的に覚えこませる行為だからです。

でも、この方法は運頼みみたいな部分があります。無意識的に「日本語の法則性」がつかめなければ、どれだけ努力しても国語が得意にならない訳ですから(むしろその場合の方が多いかもしれません)。

それよりも英語を学ぶみたいに「公式、ルール」として「日本語の法則性」をエクササイズした方が、はるかに短い時間で上達することは言うまでもありませんよね。

激変する2020年新大学入試

来たる2020年、大学入試センター試験が廃止され、大学入学共通テスト(仮称)に変わります。新テスト移行後は順次、全教科において、暗記中心の知識重視型試験から、思考力を使った「正解が一つとは限らない」記述式問題の比重が高くなる予定です。

これは、「思考力」「課題解決能力」を問う大学入試を据えることにより、中学・高校の教育のあり方を根底から変えたい、との国の強い意志によるものです。 (実際、社会や仕事でぶち当たる「課題」には、必ずしもたった一つの正解があるわけではないですよね)

おそらく回を重ねるにつれ、新テストのこの傾向はより強化され、現在小・中学生のお子さんが大学受験に臨む頃には、大きく試験問題は様変わりしていることでしょう。

その証拠に、国は入試改革だけでなく、国際バカロレア認定校の増加や大学組織の大幅見直しに強い意志を持って着手しています。これらの教育改革は「暗記力だけの偏差値秀才はもういらない。世界で戦える人材が欲しい」という産業界からの要請によるものなのです。

今までの方法が通用しない時代が来る

このような改革の流れは、一部大学では以前から行われていました。

慶応大環境情報学部の小論文入試では、思考力・表現力を問う面白い問題が毎年出されています。2015年入試では、【湘南藤沢キャンパス(SFC)では、「問題が与えられて、正解を教わる」教育ではなく、「何が問題なのかを考え、解決する方法を創出する」人材の育成を目指しています。】と問題文冒頭でうたっているほどです。

2013年の実際の問題を見てみましょう。

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、近い将来新たに建設する未来創造塾において滞在型教育に挑戦します。慶應義塾大学の原点である「適塾」のように、教員をふくめた仲間と寝食をともにし、問題発見解決型学習を目指します。

あなたは入学後、この未来創造塾において、あなたが独自に提案する科目設置を認められました。あなた自身が伸ばしたいと考える自らの身体知を最大限引き出し、伸ばしていくための新規科目を提案してください。

(中略)

設置する科目名、その科目で履修する内容、その科目を履修することによって伸ばせるとあなたが期待する身体知は何か、想定する学生数、評価方法、そして学生、教員の学び方と教え方がどのようにあるべきかについて述べてください。未来創造塾に必要とされる設備・環境などを挙げても構いません。(600字)

2020年以降は国語が最重要科目に

このような力はどこで養うか。実はすでに国は答えを出しています。大学入学新テストの国語のところをご覧ください。

そうです。国語科そのものが変わるのです。読解力偏重だった従来のあり方から、「生きた思考力(問題解決能力)」「表現力」が新たに要求されてきます。言い換えると、要求されるのは、クリティカルシンキングの力とプレゼンテーションの力です。真の思考力とプレゼン能力が揃えば、世界で十分戦える人材になれますよね。

それを身につけるためには、暗記や読解といった受身の学力だけでは太刀打ちできません。数年前の勉強法でさえすでに古くなるほど、今受験界は激動期を迎えているのです。

国は着々と準備を行なっています。国語BやPISAという、旧来とは異なるタイプの試験をすでにお子さまたちは受けているはずです。

そう、「課題を理論的に分析して、多角的に思考を積み重ね、それをわかりやすく表現する」こういうプロセスを要求する科目に、今後、国語科そのものが変わってくるのです。

まとめ

先端教育研究所  >  ことばラボ  >  新しい入試傾向と国語の重要性について